シニアと新卒者の違い(雇用や採用について考える)
若者たちの意識の変化
景気が少しずつ上向きになり、失業率が減ってきたとは言っても、まだまだ就職難の状態が続いています。社会保険に加入できない短時間のアルバイトやパートを掛け持ちし、毎月ギリギリの生活をしている方。収入が少ないために、実家から出て自立した生活が出来ない方々が、この先いくら増えようとも、結局私たちの暮らしぶりは一向に豊かになる気配はなく、また将来への不安が消えることもありません。
正社員雇用が減り、アルバイト雇用が急激にアップしているここ数年の数値を見て「失業率は確実に減っている!」とドヤ顔で主張する国のお偉方には、日々の生活に苦しんでいる私たちの、本当の生活ぶりは全く見えていないのでしょう。
さて、正社員雇用が減り、アルバイト雇用が増えたことの背景には、若者たちの意識の変化が関係しています。入社から定年まで、人生の半分を会社に捧げ、とにかく会社のため家族のために働く!という昔ながらのスタイルで頑張る人が減り、代わりに、自分のスキルアップのため、または給料を多く貰うため、様々な会社を転々とする人が増えてきたのです。
より条件が良い方へ。より負担が少ない方へ。より自分が輝ける方へ。よりストレスが少なく、楽で簡単な方へと若者はどんどん流れていくようになりました。昔は定年前の辞職と言えば、その後の生活の困窮が目に見えていたため、自殺も同然であると例えられていましたが、現代の若者たちにとって【転職】はとても身近なものであり、そのための辞職は単なる通過点にしか過ぎません。
企業と人材の攻防戦「欲しい人材 VS 働きたい会社」
そもそも企業が人材を募集するのは、作業効率をあげることで生産性を高め、少ない時間でもより多くの利益を得られるようにするためです。不景気の中で長く生き残るためには、技術がある人、アイデアがある人、知識がある人が欠かせないため、当然、それに当てはまる人を優先して採用しようとする動きがあります。
しかし、そこで採用された、技術・アイデア・知識がある人たちにとって重要なのは、他より優遇された環境であること、自分が輝ける場面が多いこと、1つのプロジェクトを成功させるために努力できる社員が多いこと、そして何より、魅力のある職場・会社であることです。
そのため、会社にとって魅力的だと感じる人材を何人採用しても、その人材にとって魅力のある会社でない限り、その後の【転職】を思いとどまらせることは出来ません。
また逆に、給料・待遇・環境面で魅力を感じ、運よく社員採用された職場で、どれほど仕事を頑張っていても、リストラなどにより[転職]を余儀なくされる場合もあります。
自分では仕事を一生懸命やっているつもりでも、他から見れば、当たり前のことを当たり前にしかやっていないように見え、工夫が全くないということもあります。あるいは他がやれば、もっと効率よくこなせると思われる。仕事は早いがミスも多く、フォローが大変である。
何年経っても成長が見られないどころか、だんだん慣れ慣れしくなったり、手抜きをするようになったり、怠慢や悪態が目立つようになるなど。自分で思っているほど、実は仕事ができておらず、リストラの対象になることはよくあるようです。
企なぜ、シニア採用が活発なのか?注目されているシニア世代の魅力
技術や知識がある魅力的な人材は、すぐにより良い企業を求めて【転職】してしまう。育成するつもりで未経験者を雇ってみても、期待するほどの成長が見られない場合の方が多く、それどころか慣れてくるほど手抜きをしようとする傾向にある。
それらの問題点を解決するため、企業側が考えたこと……それが、若者ではなくシニアを採用する、ということでした。シニア世代とは、主に定年後の60~75歳までのこと。生活を豊かにしようと、より待遇が良い会社へ行きたがる若者に比べ、シニアは自分の元気のため、時間を有効に使うため、やりがいを求めて働く人ばかりです。例え賃金が少なくても、職場という環境を大事に思い、少しでも役に立とうと一生懸命工夫をし、意見を述べ、話し合って改善策を模索。
周囲と協力しあい、目標を達成しようとする姿勢が非常に強いのです。
確かにシニア世代には、物覚えが悪いという欠点があります。簡単な作業でも、なかなか覚えられず、毎日メモを見ながら仕事をしないと、とても時間通りには進まないと言います。
だからこそ、指導する側にもかなりの根気がいるわけですが、失敗を繰り返しながらでも、くじけず諦めず毎日笑顔で働き、結果、賃金以上の働きをするようになっていくのだとか。会社側がその働きぶりに感激し、報酬としてボーナスや手当を出そうとしたら、断られたという話を聞いたことがあります。
「私たちにボーナスを出すくらいの余裕があるなら、設備や備品を新しくして欲しい。そうすれば、私たちの仕事は楽になって、効率も上がって、もっと良いものが出来るから」というのが、その時のシニアたちの言い分。
そこで会社側は、社員全員から意見を聞き、一番辛いと感じる作業を500万というお金をかけて機械化。会社の収益は増え、社員たちはより快適に働けるようになり、「死ぬまで働かせてもらうからね!」というシニアの願い通り、会社は最年長で82歳の方を今でも雇用しているというドキュメンタリーだったように記憶しています。
いつの時代でも、やはり本当に大事なのは、人と人との繋がりと、支え合い助け合える精神、そして一つのことをやり遂げることの重要性だと感じます。効率化を求めるからこその回り道について、会社も人材も、今一度考えてみるべきではないでしょうか。